米国の黒人解放指導者であるマルコムXは、1963年11月、米国ミシガン州デトロイトで行った有名な演説“Message to the Grass Roots”の中で、アメリカ黒人の威厳確立と分離革命とを呼びかけ、自らの民衆を『あなたがたは、臓物(はらわた)喰いである!=You guts eaters!』とアジっています。言った直後、マルコムXが話を続けられないほどドヨドヨドヨ~ッと聴衆が湧き上がるのが興味深いところです。
演説でマルコムXは『屋外労働する黒人奴隷には地獄だった。食いものは白人農園主の残飯。豚をつぶした時に残る臓物類だった。最近じゃチタリング(Chitterling)なんて呼んでるけれど、昔はそのまま内臓(Guts)と呼んでいたんだ。臓物喰い。そうだ、あなたがたは、いまだに臓物(はらわた)喰いなのだ!!』
さて1950年代からのマーティン・ルーサー・キングJr.やマルコムX等が牽引する公民権運動の盛り上がりの中から、1960年代にはソウルミュージックを代表にした『Soul(魂)』と言う言葉が頻繁に使われ始めたようです。そして60年代半ばにはアメリカ黒人達が奴隷時代から何百年も食べ続ける典型的な料理をプライドを持って『Soul Food(ソウルフード)』と呼び始めました。
数百年に渡り奴隷(動産)として社会の最下層に押し込められたアメリカ黒人達。ちなみに私の知人がソウルフードを指して『これは我々が生き延びる為のSurvival Foodだったのだ!』と言っていたのが、いまだに下っ腹にズシンと響いています。
日本では、吉田ルイ子さん著『ハーレムの熱い日々(1979年刊)』にも上記チタリング調理の強烈な匂いのことやソウルフード由来が記されており、その後日本で出版された多くの本にも同様な表記があるので、多くの方はご存じかと思います。私が調べた中で一番古い文献は、アメリカ歴史学者の猿谷要先生の1964年著書に『ソウルフッド』と言う表現が登場します。古くからアメリカ南部に留学・研究された氏の文献は非常に興味深く、ジャズ・トランぺッターのDizzy Gillespie(現日本語訳=ディジー・ガレスピー)をディジー・ギレスパイと訳されている等、今のように通信が発達していない中で様々な文献や資料から苦労して著された事を伺い知れます。
さて、アメリカ在住中に実生活に根差したレポートをあげるうえで、アメリカ黒人達の持つ歴史・文化そして『食』は避けて通れない道でした。『魂の料理=Soul Food(ソウルフード)』の事を少しでも知って頂けたら幸いです。
P.S. 近年、日本でも生まれ育った時から食べ続けている郷土料理などをソウルフードと呼ぶことが一般化していますが、英語ではそうした料理は『Comfort Food(癒しの料理)』と呼び、全く別の扱いをしています。
『ソウルフード』『ブラックカルチャー(歴史・文化・人物・事件等)』『ブラックミュージック』を掛け合わせて練り込む、と言う途方もないアイデアから開始された連載記事。
サウスセントラルLAのソウルフードレストランやBBQレストラン、そのオーナーやシェフを直撃し秘伝レシピを公開するなど、リアルなブラックカルチャーを紹介。
第7回:オクラ
第8回:チョコレートシティ
第9回:特別イベント報告
第19回:オックステール
第20回:ジン&ジュース
第21回:ポーク・スキン
第31回:チタリング
第32回:Tボーン・ステーキ
第33回:特別インタビュー JOONIE
第34回:ポークチョップ
第35回:シュリンプ・クレオール
第36回:ピッグフィート
第43回:フィリー・チーズステーキ
第44回:特別記事 ドン・コーネリアス訃報
第45回:ハニー・バーボン
第46回:特別インタビュー VIPレコード
第47回:特別インタビュー VIPレコード
第48回:アリゲーター(ワニ)
第49回:チトリンズ
第50回:アップルパイ
第51回:特別記事 モータウン
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